THE MUSIC/Take The Long Road And Walk It

★★★★☆

THE MUSICの3曲入りデビューシングル、通称(?)青盤とも呼ばれている。発売前にネットでタイトルトラックを聴いた瞬間に、「なんじゃこりゃ!!!」っていう物凄いインパクトを受けた記憶がある。かなり歪ませたギターが反復するリフを刻み、無骨なベースが地を這うように轟く中を、絶えずリズムを変化させるドラムとロバートの高音ボイスが縦横無尽に駆け巡る。体を芯から揺さぶるような、最高のグルーヴ感。ギターの技術は別として、サウンドから受けるこの感覚はツェッペリンにすごく似ているように思った(メンバーはZEPを知らなかったらしいが)。しかも残りのインストナンバー2曲がまた物凄く良い。まさに人力グルーヴの最高傑作ともいうべきこの2曲は、メンバーの持つポテンシャルを余すところなく見せ付けている。とにかくとんでもないデビューシングル。EPとして日本盤も出てたと思うので、アルバムしか持ってない人は絶対に聴いとくべき作品。

ST

★★★☆

そのMUSICのデビューアルバム。結果から言うと、残念な感じのする内容になっている。すでにこれが発売される前の来日公演にも出向き、その後もライブ音源を聴きまくっていたので、アルバムでもライブの良さが伝わるようなプロデュースになっていることを期待していたが、結果は逆。プロデューサーにTHE PEOPLEの時と同じく、DJシャドウなんかを手がけているジム・アビスが付いた、と聴いた時に漠然と感じていた不安が的中してしまった。とにかく1曲目の"Dance"から余計な付帯音が多すぎ。最後のピコピコいう所なんて最悪。リテイクされた"Take The Long Road"も変にハードな音でビルドアップさせられてたり、全編に渡ってバンド本来のサウンドに人工的な膜が覆い被さってるような、彼らの持ち味である生のグルーヴ感が弱まってしまっているように感じる。そのせいで今ひとつ入り込めず、中盤でだれたような印象を受けてしまう。ネットのレビューなんか見ていると"Float"や"Getaway"みたいな打ち込みを多用した曲が人気みたいだが、個人的にはこういう「ロックにダンス的要素を加えてみました」的な曲は嫌いなので、こういう安易な方向に行かないで欲しいなと思う。

Live At The Blank Canvas

★★★★

ツアー最終日となるBlank Canvasでのギグを収録したファーストDVD。自分自身彼らの初来日公演で、当時100人足らずの観客しかいなかったクアトロにおいて、初めて彼らのライブを観た時の衝撃は未だに忘れられない。彼らの持ち味はやはりライブで生み出される原始的本能に基づくようなグルーヴにある。デビューアルバムではプロデューサーの過剰なエフェクト処理によって、彼らの良さである「生の」グルーヴ感が薄まってしまっているように感じた。そういった意味でこのライブDVDは、THEMUSICの本質により近づける作品だと言える。決して上手いとは言えないが、彼らの音楽に対する真摯な姿勢が伝わってくる演奏は本当に熱くてカッコ良い。終曲THE WALLS GET SMALLERで4人の息がピッタリと合う瞬間は鳥肌もの。

Strength In Numbers

★★★☆

前作から4年弱を挟んでリリースされた3rd。The Musicについては初期EP群で熱狂し、Jim Abbissプロデュースのデビュー・フルで消沈し、2ndアルバムに至ってすっかり冷めた。今回意外だったのは、前作周辺で主導権を外部に奪われる形になった状況をバンド側が悔いてるということ。ある意味でシーンの流れから意図的にドロップしたようなこの4年間のブランクと言動に、何かしらの刷新性を期待したのは確か。

なるほど今作では、端々にバンド側の『我が我が』意識を感じる。反復するビート、旋回する轟音ギター、鮮烈なハイトーン・ヴォイス・・・Jamるうちに曲が出来ました、と言いたげな原初のグルーヴを根幹に、パーツ/パーツに各種要素を散りばめる。ギター・エフェクト一つ取ってもそうだし、オリエンタルなフレーズの挿し込みにも明確な試行錯誤の跡が見える。そんな合財をひっくるめて、序盤の流れはイイ感じ。練り過ぎることなくシンプルに、熟慮の上で引き算を行ったようなグルーヴが素直に身体を突き揺らす。タテ方向のマッチョネスが際立った前作への反動もあるのか、今作のグルーヴには流線形のスマートさが強い。

ただ、「バンド主導」が良い向きに働く前半に対し、中後半ではその引き出しの少なさが気にかかる。『dance』の要素が最近のインディロック群の洗練されたそれでなく、90年代のテクノバンド然とした古臭さなのには苦笑しつつ逆に面白かったりするんだが、どうにも楽曲ごとのコントラストが薄く、それぞれの連環も弱い。結構イロイロやりつつも、全体でしっかりグルグル渦巻き逆巻いてていた初期のようなインパクトは感じられなかった。もっとメチャクチャやったらいいと思うんだけどな。ナイーヴさが裏目に出たって点では、違う意味でだが前作と同じ。



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