MOTORHOMES/Songs For Me(And My Baby)

★★★★☆

スウェーデンの5人組、Motorhomesのデビューアルバム。同じスウェーデン出身のバンドKentや、アイスランドのSigur Rosなどと同様に、Motorhomesの鳴らすサウンドも、かの北欧の地のバンドにしか出しえないような、荘厳ともいえる形容し難い美しさに満ちている。命の鼓動を刻むようなドラム音から始まり、叙情的なギターが流れ込むTr.1、"Heaven Sent"が流れた瞬間から、部屋の空気が一変する。続くTr.2で、よりエモーショナルさを増したギターが泣き、「It's Alright…」とリフレインするMattiasのファルセットボイスに止めをさされる。もう涙腺を直接刺激されるような、ただただ美しいサウンドが展開されていく。しかも恐ろしいことに、この完璧なメロディーが途切れることなく、全10曲に渡って続き、間でスキップしたくなる曲が一切ない。

よくTravisなんかが引き合いに出されているのを目にするが、叙情系UKギターバンドとの違いは、同じように影を感じさせるメロディーであっても、UKのバンドの場合、それが個人の内省的思考に基づくものといった印象を受けるのに対して、北欧のバンドが持つ影には、冷たく荒涼とした大地を連想させるような広がりのあるイメージが伴う。そしてその影の後ろには光が見える。だからこのアルバムは物悲しさに満ちながらも、聴き終わった後に、まるで賛美歌を聴いた時のように(聴いたこと無いけど)救われた気持ちになる。

余談ですが、このアルバムを買ったとき、ちょうど五味川純平さんの「人間の条件」を読んでいて、シベリアの大地を舞台にした物語の雰囲気とこのアルバムの曲群が異様にマッチしていて、ものすごく泣いた記憶があります。流通の関係か、少し手に入れにくいアルバムですが、個人輸入してでも買う価値はあります。



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