MOGWAI/Young Team

★★★★★

97年リリースの1st。NMEの年間チャートで7位にランクインしたこの作品を作った当時のメンバーの平均年齢はなんと18歳! まさに恐るべき子供たち。この時点ですでに「静→爆音」という構築美が完成されている。 というかノイズの持つ凶暴性は全作品中で最もずば抜けていて、 ギター/ベース/ドラム/フルート/ピアノというシンプルな楽器が織り成す壮大なサウンドスケープは、 攻撃的・破壊的であると同時に儚さも感じさせ、そして物凄く美しい。 私はこの作品を聴くと、冬のピンと張り詰めた夜気のような緊張感と、 その下で一人夜空を見上げているような少し物悲しい郷愁を覚えます。 Tr.10、"Mogwai Fear Satan"の16分間に及ぶ怒涛の演奏は至福の瞬間。自分の音楽観を根底から覆したアルバム。

Come On Die Young

★★★★☆

99年リリースの2nd。プロデューサーはデイヴ・フリッドマン。その手腕によるところもあるのか、 一つ一つの音が大きな景色を描き、ゆったりと大気中に満ち溢れるように鳴り響いている。 点在的にサンプリングされたナレーションが生み出す独特の空気感と、より感傷的な響きを増したメロディーが、今作で初めて大きく導入されたストリングスの調べと共にリスナーをすっぽりと包み込むように展開されていく。終盤のTr.11、"Christmas Steps"は極太低音のベースとディストーションギターが暴れまわる名曲だが、このアルバムはそういった個性的な曲群を従えながら、作品全体としても確固たる強烈な我を放っている。「自分の葬式で流すアルバムを選べ」と言われたらこれを選ぶかな。

Rock Action

★★★★





Happy Songs For Happy People

★★★★☆

03年リリースの4th。当初このアルバムタイトルを目にした時、これは間違いなく彼等流の皮肉だろうなと思った。しかししかし、音を聴いてその考えは一蹴。過去3作と比べると、展開されるメロディーが格段に柔らかく、そして光に満ちている。次第に高まり・昇りつめ・炸裂する轟音ギターも、従来のエッジのたった鋭利な響きから、滑らかなそれへと変わっており、ストレートな曲展開と相まって非常に高い昂揚感を発散している。轟音+美メロというモグワイの真骨頂を存分に味わうことのできる快作。

Ten Rapid

★★★★





EP+6

★★★★





Government Commissions (BBC Sessions 1996-2003)

★★★★

 「”Lady's  and  Gentlemen、、、、、MOGWAI!”」
昨年11月に逝去したJohn Peelのナレーションにより導入される本作は、氏の名物番組「John Peel Session」及びSteve Lamacqの「Evening Session」において流された音源をコンパイルした、Mogwai初のライブ盤である。

 新旧織り交ぜて配置された10曲/66分。柔らかな光を放つトラックは一層その眩さを増し、ノイズ吹き荒ぶ曲群はその凶暴性を臆すことなく剥き出しにする。「一度ライブテイクを聴いてしまったらオリジナルはもう聴けない」、そんな乱暴な感想を述べたくなるほどに彼らのライブは美しく、そして凄みがある。中でも特に強烈なのが下記2曲。

 まずはTr.6"Like Herod"。とぐろを巻く分厚いバスラインに、陰鬱なフレーズをリフレインするギターが絡みつく。そして数分後、訪れる一瞬の静寂の後に立ち現れるのは、全てを薙ぎ倒すフィードバックノイズとディストーションギターの暴風雨。18分間に渡り、全身を張り倒されるような錯覚さえ覚える暴力的な音圧に支配される楽曲は、凄まじいの一言。

 そしてTr.9"helicon 1"。美しいギターのベールにすっぽりと覆われた中、ゆったりと漂うクリアディレイのメランコリックな音色が、緩やかな螺旋を描きながら積み重ねられていく。そして終盤、昂揚した精神を解放するかのように轟くのは、オリジナルバージョンとは比にならない重量感を備えた美しいディストーションギターの洪水。これまで幾度となく聴き、これからも数え切れないほど聴くであろうこの曲だが、圧倒的に美しく/力強いギターの音色に身を委ねる瞬間の昂揚感は、きっと永遠に褪せることがないだろうと思う。本当に素晴らしい作品です。

My Father My King

★★★★☆

 「"轟音ノイズ4重奏"」
この曲を聴いていると、そんなフレーズが頭をよぎる。"My Father My King"、別名"Jewish Hymn"。ライブでの定番曲が、Steve Albiniプロデュースのもと音源化された。「モグワイ=轟音」という公式は今や不動のものだが、本作はそのモグワイのライブにおける、圧倒的に美しく・破壊的な空気をかなりの近似をもって再現している。

 20分強に渡って、一瞬たりとも気を抜けない濃密な空間が繰り広げられるが、特に10分を超えたあたりからの展開は圧巻。轟音を飲み込む轟音、「もう無いだろう」と思うその3つも4つも上をいく爆音ノイズが音の壁を何度も塗り替えていく様は、間違いなくリスナーの脳裏にライブでのカタルシスを甦らせてくれる。ある意味先ごろリリースされたライブ盤よりも、彼らのライブでの本質に迫れる作品だと思う。

Mr.Beast

★★★★

前作から3年、グラスゴーの至宝・Mogwaiの5thアルバム。しなやかに爆ぜる轟音が、大きな昂ぶりをもたらす快作。

Tr.2"Glasgow Mega-Snake"
空間を鋭くえぐるギターリフに導かれ、アグレッシヴなディストーション/フィードバックが間髪置かずに炸裂する。一切の無駄を廃したタイトな展開から、ひたすら原初的な爆音にまみれていく様は、初期の名曲"Summer"を彷彿とさせる。

Tr.7"Folk Death 95"
澱みなく流れるメランコリックな旋律の底から湧き上がる轟音、轟音を飲み込む爆音、爆音を塗り替えるデジタルノイズの破壊的な音圧。"My Father My King"での20分超を4分間に凝縮したようなこの曲は、多くの路を経て「轟音」の地へと戻ってきた、昨今のモグワイらしい好ナンバー。

水面で跳ねる   雲の歌声
狂う 陽射しに   約束の文字
足もとに広がる  思考の欠片を見つめ 
叶わぬ想いを   希望の涙に変える・・・

素晴らしい情感に満ち満ちたピアノの旋律が、ゆっくりと大きな弧を描き、Envyのボーカル/フクナガテツヤによるモノクロームの叙述が添えられる。ヴォコーダーを含むサンプリングが幻想という名の彩りを添え、静かに静かに溢れ出るノスタルジア、Tr.9"I Chose Horses"

そして先行シングルともなったTr.6"Friends Of The Night"
感傷的なラインを描くピアノの輪舞は、やがて表出する壮麗なフィードバックの奔流に飲み込まれていく。全方位から包み込む、途轍もなく美しく・強く・嫋やかなディストーション/ノイズの洪水。静謐に覆われた月面で吹き荒れる砂塵を思わせる音のヴェールが、莫大な昂揚感をもって聴き手の世界を刷新する素晴らしい楽曲。

前作以上のエモーションの発露、さらにほぼ全ての楽曲が5分以下という引き締まった構成。静と爆音の混在するインストゥルメンタル・ロックというスタイルは、今ではすっかり当たり前のものとなった。そうした音を定着させたともいえるモグワイ。今のシーンにおいて「Mr.Beast」が"衝撃"という形容をもって評されることはまずない。が、そうした漠たる形容は最早不要と思わされた、抜きん出たクオリティを放つ快作。

The Hawk Is Howling

★★★☆

前作から2年半のスパンでリリースされた6thアルバム。プロデューサーには彼らの初期作との関わりが深いAndy Millerを迎えている。

暗く立ち篭めるムーディな旋律にチャイミーな鍵盤音を散らしながらクレシェンドしていくオープナー"I'm Jim Morrison, I'm Dead"、重厚な気配はそのままに、その霧中でささくれ立ったファズ/ディストーション/ノイズの三重奏が猛る"Batcat"の嵐へと飛び込んでいく展開は、前作で確立したスタイルを踏襲して聴こえる。幻想的とも言っていいだろうその独特のウネリを持った分厚いサウンド・ウォールや、Tr.7"I Love You, I'm Going To Blow Up Your School"で聴ける、いつ果てるとも知れない長い長い轟音の咆哮は、直近2作で体得したバンドの新たなる強み。一方で、Glasgowらしい牧歌的なアンサンブルが跳ねる"The Sun Smells Too Loud"や、透明な叙情の波紋を静かに拡げる"Local Authority"などでは最初期の透徹としたセンチメンタルな一面を伝える。そういった意味で本作は、Young Teamリリースから10年を迎えたバンドの一つの区切り的な作品なのかもしれない。が、楽曲の安定感よりも野心の無さや求心力の弱さのほうが印象として強く残ってしまった本作は、全体としてはかなり物足りないというのが正直なところ。とは言え、間近に控えた来日公演は楽しみだ。

Hardcore Will Never Die, But You Will

★★★★

間にライブ盤を挟みつつ、約2年半のスパンでリリースされた通産7枚目のスタジオアルバム。初聴時には「これまでで一番MOGWAIっぽくない!」作品だと感じたが、繰り返すうちにあぁやっぱりMOGWAIだと思えてしまう、その世界観はものの見事に健在。

特に"HAPPY SONGS"あたりで印象的だった感傷的な単音の鍵盤フレーズとはまた異なり、今作ではベッタリと平面的に敷かれるKeyフレーズが各所に目立つ。ときに宗教音楽のようにも、無機質なビープ音にも響くそれを下敷きに、それぞれに表層を変えたコンパクトな楽曲が並ぶ。

歪んだベース主導のドライヴ感のある楽曲や、ヴォコーダーを通したボーカル入りの曲、あるいは柔らかな昂揚と共に白光色の彼方へ昇っていく楽曲など、それぞれにフックが効かされた楽曲群。そのためか、前作以上に各トラック個別の独立した感が強く、アルバムトータルでの押し出しは弱く感じる。この辺で評価が分かれる気もするが、個人的にはアンセミックな楽曲不在の物足りなさを感じこそすれ、耳障りの良いバリエーションに富んだ轟音ナンバーの詰め合わせ、といった内容は素直に気持ちよく、悪くないと思った。

http://www.myspace.com/mogwai



back