MEW/Frengers

★★★★

なんだか変てこなジャケットですが、中身はすごく良いです。MEWはデンマークの4人組だそうで、ネット上の各所で絶賛されてるのを見て、パソコンでちょこちょこと何度か試聴してみたんですが、その時は実はピンと来ませんでした。それで購入するのが結構後回しになってたんですが、家のしっかりしたオーディオ機器で初めてちゃんと聴いた時にビックリしましたね。「面白い音が色んなとこから飛んでくる〜!」って感じで。

1曲目の"Am I Wry? No"からして、ザクザクしたリフと北欧のバンドらしい澄んだハイトーンボイスが気持ち良く疾走する前半部の曲調から、終盤でそれがシンセとピアノストリングス、女性ボーカルが織り成すなんともいえない郷愁的な雰囲気に転調する、そのダイナミックさに驚きました。それでその後の曲も全くもって先が読めない、それでいてそういった変化が決して強引に感じられない、バンドの柔軟なセンスを感じさせるものばかりで、しかも聴くたびに新しい音の発見があったりして、まさしく「音の万華鏡」といった表現がぴったりくるような、すばらしい世界が展開されてます。ボーカルの声質は全然違いますが、Dovesが2ndで見せた音の桃源郷のような、美しい光に満ちた光景が脳裏に浮かぶ、ものすごい昂揚感を味わえる作品ではないでしょうか。"She Came Home For Christmas"や"Comfotring Sounds"の、果てしなく昇り詰めていく感覚なんてもう最高ですね。

And The Glass Handed Kites

★★★★

 前作「Frangers」の端々で垣間見ることのできた、既存のフォーマットを嘲笑うかのように目まぐるしく表情を変える展開とフックの効いたメロディ。2年半のインターヴァルを挟んで届けられたこの2ndアルバムにおいて、その卓越した音の構築力は完全にその姿を露わにした。
 
 氷塊を思わせる重く怜悧なギターリフが叩き込まれ、オーロラを思わせるコーラスが下から湧き上がるオープニングトラックから、ほぼ全ての楽曲が途切れることなく展開していく。「音の万華鏡」と評した前作のカラフルさとは異なり、今作、特にアルバム前半部では空間を掘削する重厚なリフとリズム隊が前面に押し出されている。故に、一切の夾雑物を廃したヨーナスの歌声がより強烈なコントラストを伴って鳴り響き、耳殻へと突き刺さる。中でもマイナーコードのギターリフが激しくかき鳴らされるTr.5"Apocalypso"から、邪気溢れるリズム隊と下層で戯れるヨーナスの歌声に背筋をゾクゾクさせられるTr.6"Special"、天使の交歓を思わせる美しいハーモニーが舞い踊る"The Zookeeper's Boy"へと続く流れは何度聴いても素晴らしく、言葉に言い表しがたい昂揚感をもたらしてくれる。

 "She Came Home For Christmas"や"Comforting Sounds"のような、完全に高みへと突き抜け完結する楽曲を数多備えたデビュー盤も鮮烈だったが、作品トータルとしての完成度を見れば、今作とは比較にならないだろう。荒々しくも柔らかで、眩暈のするような昂揚感が横溢する素晴らしい作品だ。

No More Stories Are Told Today, I'm Sorry, They Washed Away No More Stories The World Is Grey I'm Tired Let's Wash Away

★★★★

暗く輝くデンマークの星/Mewによる約4年ぶりとなる3作目。前作で穿たれた、仄暗く深い穴の底から滲み出るヒヤヤカな漆黒が夜気のように全編を覆う、メランコリックかつクールな快作になっている。

その音が生み出す極私的なスペース/閉塞感、およびそのなんとも言えない心地良さ/昂揚感がたまらなく、いい。空間がネジくれたような奇抜な音の波とともに立ち上がるオープナー"New Terrain"はそれもそのはず、逆回転でも別の楽曲として成立するというかなり実験的なアプローチが採られている。続く"Introducing Palace Players"の蹴躓くようなギター・リフを軸にした構成も相当に奇態だが、それがヨーナスの浮き世離れした美声/コーラス/ストリングスのもとで非常に滑らかで高透明度に仕上がっていくサマが圧巻。ひたすら内へ内へと蹲るようなベクトルにも関わらず、その限定的なスペースはジメジメとした湿度に覆われることはない。温かな鬱、とでも言うか、ある意味最も抜け出し難い危険な音響空間。展開としては起伏がそう多くない作品中で、おそらく最もキャッチーなのが"Sometimes Life Isn't Easy"。天使が交歓するようなドラマティックな華やぎのイントロから、背後が透けて見えそうなピュアネス/ナイーヴなメロディへと移行し、パンッと弾けるような転調から、さながら敗北した小さなモノたちが唱和するような涙腺直撃のコーラスへと連なっていく。サマソニでの光景もあいまって、この楽曲はもうタマランとです。シーンにて低からぬ人気を獲得しながら、昨今では珍しく着実に自分達のスタイルを深化/進化させていっている感のするバンド。かなりの好盤。

http://www.myspace.com/mew



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