MARNIE STERN/In Advance Of The Broken Arm

★★★★☆

NYCのお姉ちゃん、Marnie Sternによるデビューアルバム。なわけですが、これがかなりのインパクトを持った好盤。彼女の右手が叩き出す高速のピロピロクネクネニョロニョロの電撃リフと、Zach Hillによる鬼ドラムが激烈なバトルを繰り広げる。そう、今作においてはHellaのザックが終始に渡って彼女をサポート、叩き叩き叩きまくって変則のグルーヴで地を捲くり上げていく。

補助的要員としてベースやキーボード、サイドギターが入るものの、メインで鳴り渡っていくのは2人が叩き出すかなーりテクニカルなせめぎ合い。錯綜するMarnieのタッピング・ギターと、圧倒的な手数でもって絶妙なズレを空間に溜め込み、素晴らしいグルーヴを練り上げていくZachのドラミングの掛け合いが物凄くカッコイイ。かなり変則的でありながら、その実とてもストレートなエネルギーをぶつけてくる楽曲群は、"Hold Your Horse Is"期あたりのHellaを思わせます。

さらには、それ単体でも成立してしまいそうな鳴りっぷりを見せるアクの強いインストに、Marnieの声がまた非常に良いコントラスト/アクセントとなって絡んでいく。彼女の歌声はさながらローティーンの如き何とも邪気の無いそれであって、時に嬌声や囃し声のキラメキと共に織り込まれるヴォーカル・パートは、丸っきり変態じみた(笑)インストを背景に、非常に鮮やかな響きを見せている。

ファンタスティックなエレキの音色とマジカルな歌が掛け合わされるその様は、さながら狂ったエレクトリカル・パレードのよう。なんとも言えん不思議な恍惚を生み出しています。ベスト・トラックは全部。全部良いです。

This Is It & I Am It & You Are It & So Is That & He Is It & She Is It & It Is It & That Is That

★★★★

期間1年半の早業で届けられた2nd。ドラム&プロデュースには前作から続きZach Hill(HELLA)。なんじゃコリャ!?っちゅう長いタイトルは、哲学者アラン・ワッツの一説で「物事に境界は無い」という意味らしい。

前作が各所で高評価を得たマーニー嬢だが、今回もまた期待に違わぬ好盤!飛びに飛んでチャーミングなサウンドはグルーヴを強め、奇天烈激ポップな内容に嬉しく叩きのめされる。雪崩の如きスポークン・ワーズが撃ち込まれ脳内で純白に炸裂するオープナー"Prime"からイキなりのトップギア。高速タップから放たれる螺旋状の昂揚感、マイナー・コードが描くえも言われぬ崩落感、散弾めいて撃ち込まれるザックのDRUMが狭間を波立て煽り立て、たった2人で、いやはや基本たった2人でですよ、こんなマジカルでファンタスティックな音の虚像を立ち上げていく。

カラフルながら、端々で狂気の色を孕んでいたのが前作だとすれば、本作はその闇を取っ払って突き進む強さこそが印象的。前作ラストの"Patterns of a Diamond Ceiling "みたく、高次で行われる実験的な楽曲は無くなったが、代わって楽曲のダイナミズム、つまりは燦然と飛び交う音が収斂し、陽性をもって炸裂する瞬間が明らかに増加。自由律に身を任せ駆け巡る音が音が音が頭の中を煌びやかな昂揚感でメチャクチャに掻き回し、頭が手が足がつまりは身体が動き出すのを抑えきれぬ喜びで全身を満たす。少なからずアヴァンな要素を最前線に送り込んでいた前作に比べ、より本来の意味での表現に磨きがかかった良盤。

http://www.myspace.com/marniestern1