LVMEN/An Anthology Of Already Released Songs

★★★★☆

チェコの5人組による衝撃的な怪物作。この感覚、Mogwaiの"Young Team"を初めて聴いた際のそれにむっちゃ近いかも。己を取り巻く世界が根っこからグルリと裏返るような、強烈な昂揚に鳥肌立った。これまでその存在すら知らなかったのだが、前身となるEMBERの面子を中心に、96年頃結成されたというバンドのキャリアは長い。本作は長らく廃盤となっていたデビュー盤12"(98年)の2トラック(計28分)と、同じく廃盤の"Raison D'etre"(00年)の全5曲(41分)をリマスターし、再録している。

とりあえず、こげな音はこれまで聴いたことがない。NEUROSIS近辺を引き合いに出されるLvmenの楽曲は、ポスト・メタル/ハードコアの領域で蠢く「化け物」じみた巨大な膂力と、透徹とした美が支配する暗闇の叙情に充ちている。10分超の大曲が必然として鳴り響く無欠の轟音世界。散り嵌められる騙り言葉や幻想的な女性ヴォーカル、旧い映画からのサンプリングが脳裏に鮮烈なヴィジョンを描き、尋常でない量の脳内麻薬を放出させる。通奏低音のように敷かれるSEが全域をプログレッシヴな霞で繋ぎ、猛烈な感情の奔流と驚異的な轟音とが何度も何度も繰り返し予測不能に迫り上がり満ち引きしては炸裂する。

冒頭"T"を聴くだけで、表現される次元の桁違いが判るはず。遠雷と朧なフルートの旋律が一瞬で一面を塗り替え、凪の大海が黒雲に呑まれていく「映像」に言葉を失う。天空を引き裂く絶叫と轟音、刻を射止めんと叩きつけられる屈強なドラム・ロール、読経、妄執じみた繰言や幻想的な女性ヴォーカルまでをも交える数々のサウンド・エフェクトまで、まさしく完璧。参った。

Mondo

★★★★☆

短からぬ沈黙の後、リリースされた2ndアルバム(06年)。LVMENの楽曲は全て通し番号で繋がっており、本作には#8〜#13"まで全6曲/40分が収録されている。チェコと言えばヤン・シュヴァンクマイエルの映画も思い浮かべるが、何か、この国のアーティストが描く"闇模様"には尋常でない迫力の純度/密度があるように思う。

暗く、物哀しく、しかして妙に胸騒ぐサンプリングの波紋に導かれ、激メランコリックな重奏の波に漂う"#8"、ひしゃげた笑い声から語り口調のチェコ語が溢れ出し、ヘヴィなリズムに引きずられるままに超常的なマッシヴ・ギター/浮き世離れした高域絶叫が炸裂する"#9"からして、異常。強靭なリズムを穿つドラムに覚醒する"#10"で狂騒は一気に膨れ上がり、姿態を変えながら執拗に襲い来る狂った轟音/ノイズに、死ぬ。灰色の叙述を随所に散りばめ、よりシネマティックな風貌を増した楽曲群は、同時にそのメタリックな激情、巨大な叙情の深みをあからさまに魅せつける最兇仕様。ここぞ!とばかりに絶叫する妖怪じみたヴォーカルのカオスがもうね、ヤヴァイ。MogwaiともGY!BEともNEUROSISとも違うサウンドは、完全にオリジナル。終わった、、、と思った背後から再びの轟音に見舞われる展開の連続は、確実にこれまで見た事の無い世界を見せてくれる。

http://www.myspace.com/lvmen



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