THE LOW LOWS/Fire On The Bright Sky

★★★★

Parker & Lily名義で活動していた、USアセンズのP.L.Noon率いる3ピースによるデビューフル。痛々しいまでのメランコリーを孕んだサウンドが、ゆったりとした揺らぎをもって瓦解していく様がとても美しい。

ブランケットの温もりを思わせるオルガン/ハーモニカの旋律を基盤に、Noonの感傷に満ちた歌声が宙空に漂い、終局に向けて次第にくず折れていくオープニングトラック"Dear Flies, Love Spider"は、クリムゾンの"epitaph"をも思わせる、憂鬱に憂鬱を塗り込めていくような、しかしてそれが心地良い空間を形作る珠玉のナンバー。一方で、深く、深く、柔らかな昂揚に満ちたリヴァーヴの幻想の中を、ジャングリーなギター・コードと穏やかなフィードバックノイズが睦み合いながら行進するTr.3"Velvet"では、Galaxie 500にも通ずる、永遠に褪せぬ昂揚がゆっくりと描き出されていく。

勢いだけに任せることのない、スローテンポな楽曲が多くを占める極めてシンプルな構成の楽曲群。しかしながら聴き手の胸を強く掻き毟る歌声と、自身を焦がし尽くすかの様相で高まり、やがて崩壊していくバンド・アンサンブルが非常に強い昂揚感を放出している。

朧な光を振り落としながら刻まれるファズ・ギター/琴線を揺らすNoonの歌声に高められるかのように、オルガンを始めとするインストゥルメンタル群が白熱していくTr.6"Wolves Eat Dogs"で溢れ出す感情の奔流は、色めく秋の気配を孕んだ美しい感傷に満ち充ちて場に鳴り渡る。物悲しさがなんとも心地良い、秋の夜長にお供させたい素敵なアルバム。

http://www.myspace.com/thelowlows