LONGWAVE/The Strangest Things

★★★☆

何か物足りない感じがするこのアルバム。LongwaveはLAの4人組で、メジャーデビューとなる本作では、Dave Fridmannがプロデュースを手がけている。1曲目から、エフェクトがかったドラムに、空気中に溶け込むように流れる心地良いフィードバックノイズの上に鮮やかに織り込まれる単音ギターサウンドと、現代版シューゲイザーとも言える音響空間は大好きな雰囲気。メロディーもなかなか良いし、そこに乗っかってくる低いトーンの落ち着いたボーカルもまた好み。けれども、緩急をつけて曲配置したり、エフェクトがけたボーカルを前面に出し、アコースティックギターとストリングスで聞かせる短い曲を挟んだりはしているものの、あまりにもきれいに収まりすぎてるというか、どうも聴き終わった後の印象が弱い。別にむちゃくちゃ暴れろとか言うつもりはないけれど、曲作りのセンスはありそうだし、もうちょっと独自性のある面白いことをやって欲しいかな。贅沢だけど。とにかく、音の雰囲気自体は大好きなので、次に期待ということで。

Secrets Are Sinister

★★★★

これは「化けた!!!」と驚いてもいいんではなかろうか。米国のシューゲイジング・ロックバンド/Longwaveの4thアルバムがかなりの好内容になっている。過去2作でそれぞれデイヴ・フリッドマン、ジョン・レッキー(Stone Roses、Radiohead、Kula Shaker)といった大物プロデューサーと組んでいた彼らだが、本作ではそのプロデュースにThe NationalやInterpol等を手掛けるピーター・カティスを迎えている。

純正のセンチメンタリズムと美しい浮遊感、白昼夢めいた昂揚を滲ませるメロディ・ラインが一体となって織り成す楽曲が大きな魅力のバンドだが、個人的にはこれまでどうも、そこへ素直に寄り掛かる部分が強過ぎるように聴こえ、どうにも一本調子というか、あと一つ突き抜け切れないという印象を持っていた。そこで本作だ。本作ではそうしたバンド本来の強みはそのままに、それこそ職人芸を思わせるような音の交合や意表を突く大胆な装飾が全編に渡って展開されており、夾雑の強みとでも言いたくなる力強い胎動が絶えず漲っている。つまりは、最高ってことなのだが。

Longwaveらしいイントロ・ギターの漣から、間髪入れず轟音ギターが炸裂する冒頭"Sirens In The Deep Sea"で軽ーく鳥肌。畳み掛けるように降りかかる天上の歌声とメロディアスなベースライン、頭ん中を駆け巡り昇り詰めていく轟音の調べで絶頂する。続く疾走系の"No Direction"にしても、合間合間で織り込まれる過剰なソロ・ギターが単調さを切り裂く塩梅で鳴り響き、加えてスパイス程度に投げかけられる音響的アプローチが実に自然に、次曲"Satellites"でのデジタリスティックなゲイザーサウンドへ橋を渡している。穏やかなサウンド・プールに落ち着くTr.4"The Devil And The Lair"ではラスト90秒で幻影のようなギターソロが烈しく踊り、作中唯一D.Fridmannがプロデュースを手掛ける"Life Is Wrong"での狂的に豊潤な音響マジックへと突入、ベースライン主導の渋い反復昂揚から、再び強烈な歪みを持ったギター・ソロが飛び出す"Eyes Like Headlights"、純度100%のシルキィなトレモロ/メロディが一面を埋める"I Don't Care"での暗い昂揚感、ここまでやってくれりゃ、1曲ぐらいこういう素朴な唄モノがあってもええわな、、、と思っていた矢先に最強の爆音が噴出する"Shining Hours"を通り越え、煌き反射する美メロがなんとも穏やかなタイトルトラックにて幕を引く。基本の展開はあくまでシンプルに、絶妙な色彩の足し引きで最後まで見事に魅せ切る本作はかなりの良作。驚いた。



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