THE KILLS/Keep On Your Mean Side

★★★☆

VVとHOTELの男女二人から成るガレージ・ブルース・バンド。男女二人組のガレージ・ブルース・バンドっていうとWhite Stripesがまず思い浮かぶわけですが、Killsのサウンドに漂っているのはもっと気だるく不健全な空気。チープな機材で録音していることがより一層その退廃的な雰囲気を生々しく描き出しています。

Tr.1の"Superstition"は、右チャンネルからはずっしりとへヴィーなギターリフが延々と繰り返され、それに合わせて左チャンネルからはVVのなんとも艶かしいボーカルが流れ出してくる。Velvet Undergroundの"Gift"も連想させるような極めてシンプルな構成ながら、曲の放つ殺傷力はかなりのもの。曲の中盤で一瞬色を見せるギターに対し、ノイズとも見まごうようなVVの絶叫も凄い。Tr.2の"Cat Claw"はアルバム中最もアップテンポな曲調でガンガンと攻めてくる。その後も無機質で重いドラムビートとギターリフ、VVのボーカルが気だるくセクシーなグルーヴを展開していく。そこにHotelも加わって、ツインボーカルの投げやりな掛合いが最高にスリリングな瞬間を生み出しているのがTr.8、"Hitched"。そしてその勢いをさらに加速する"Fuck The People"と併せて、ともすれば一本調子でダレ気味になりがちなアルバム終盤をうまく引き締めている。そして散々危険な空気を撒き散らしていたにも関わらず、締めの曲がアコースティック調の柔らかなサウンドというのも面白い。たったこれだけの楽器でこの世界観を作り上げているセンスはかなりのもの。これから期待できます。

THE KILLS/Keep On Your Mean Side

★★★☆

THE RAVEONETTES同様、こちらも10年のキャリアを誇る男女デュオ。セクシャルでインモラルな香りを発散するAlisonのヴォーカルと、咳込むように土臭いリズム、粗いギターに切り刻まれるガレージ・ロック。

この人らも当初から完成された世界を持ってたが、3年ぶりにリリースされたこの4thアルバムはこれまでで最もトータル・バランスのとり方が巧く、荒々しいリズムの胎動に乗せられる冒頭"Future Starts Slow"を皮切りにラストまで引っ張る力アリ。

ブン回される鉈のようなリフレインが鈍色に光る"Nail In My Coffin"、一方ではそのリフレインが静かに熱く扇動するAlisonの声に引かれて重みのあるグルーヴへと繋がる"DNA"、物悲しく煙るピアノを伴奏にノスタルジックなメロディを紡ぐ"The Last Goodbye"など、毎度のことながら最後まで突き抜けてはくれないものの、単に危なカッコイイ「雰囲気」だけに終わらないうま味を感じる1枚。

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