KENT/Verkligen

★★★☆

本国スウェーデンでは絶大な人気を誇るKentの2nd。私も大方の人と同じく、Kentを知ったのは4thのHagnesta Hill。そこで彼らのサウンドの虜になり過去のアルバムを買い漁ったわけですが、1stだけは1度タワレコで見かけたのを最後に未だ買えず。海外通販しか手はなさそう。

さてさて96年にリリースされたこのアルバムはといえば、良くも悪くも荒削り。感情をダイレクトにギターサウンドに乗せて放出してる感じで、全編に渡ってギターが前面に出てきてます。メロディーはどれもそこそこ良いといった感じで、純粋なUKギターロック好きの人は気に入りそうですが、まだKentの確たる世界観は顔を出していません(当たり前といえば当たり前ですが)。そんな中でお薦めなのはTr.6、"En Timme En Minut"。憂いのあるサウンドから雪崩れ込むジャムにピアノが絡みながら昇り詰めていく高揚感は、単純ですがものすごく気持ち良いです。それにしてもスウェーデン語の歌詞は独特な響きと味わいがあってすごく良いですね。何言ってるかかは皆目不明ですが。

Isola

★★★☆

続く3rd。基本的には前作からの延長となる叙情系ギターロックサウンドですが、音の響きが格段に良くなってます。前作ではただかき鳴らされているだけだったギターにしても、今作ではその音の処理にもきちんと気を使っている感じで、構築された音世界に格段の深みが感じられます。同時にソングライティング能力もかなり成長していて、泣きのメロディーを伴ったKent節が一層冴え渡ってます(ただ、まだやはり一本調子な感じは否めませんが)。しかしながら終曲の"747"はかなり良い曲です。泣けます。

「スウェーデンのRadiohead」とも言われていますが、曲の端々ではVerveのサイケデリックにたゆたう雄大さも感じられます。ちなみに私が買ったのは英語盤でした。スウェーデン語Verも聴いてみたい。

Hagnesta Hill

★★★★☆

2000年リリース。透明感のある冷んやりとした空気をまとったメランコリックなメロディーが生み出す独自の世界観を完璧に確立し、日本でもその名前を多くのリスナーに知らしめた傑作4thアルバム。上記2作と比べても楽曲のクオリティーが格段にアップしています。

前作と比べて格段の進化を見せているのが、ドラムとベースのリズム隊が織り成す骨太なグルーヴ感。これまではどちらかといえばギターのみが前面に出てきていたんですが、今作では打ち込みを思わせるような重いドラムサウンドと、これまた重みのあるベースラインがかなり気持ち良いです。それでいてこれまでの繊細さは全く損なわれておらず、泣きのメロディーには一層の磨きがかかり、叙情的なギターサウンドと共に感情を掻き毟る音の洪水となって押し寄せてきます。随所で効果的に使われるホーンやトランペット、ハーモニカ、チェロ、バイオリンなどのサウンドもまたなんともいえない郷愁的な雰囲気を醸し出していて良いです。

一切捨て曲がない素晴らしいアルバムですが、Tr.11の"Protection"は"747"以上の名曲。ギターの響きだけでグッときます。日本盤のボートラ"Time To Kill To Die"も、美しいピアノストリングスと感傷的なメロディーが調和し、シンプルながらもKentの魅力を凝縮した素晴らしいナンバー。Travisのような叙情系ギターロックが好きな人で、もしまだKentを知らないという人がいればぜひ聴いてみて欲しいアルバムです。

Vapen & Ammunition

★★★★☆

2002年リリースの5th。前作と比べると全体的にかなりタイトな感じがします。と言ってもシンプルな音からはこれまで通過してきた年月と経験が滲み出てくるようで、堂々とした貫禄さえ感じさせます。

民謡を聴いているような、不思議な懐かしさを感じるメロディーが印象的な"Parlor"(私は初めて聴いた時、昔やったテトリスのクリアー画面で鳴っていたロシアの民謡を思い出したりしました。)や、女性ボーカルとのデュエットがこれまでにないアンビエントな雰囲気を生み出しているその名も"Duett"など、シンプルながらもこれまでとは少し違った側面を見せる曲が印象的です。そして聴き込むほどにジワジワと胸に染み入るkent節はやっぱり健在。このアルバムは聴くたびに好きになっていってる気がします。密かに1番の愛聴盤になりそう。スウェーデン語バージョンを買ったのは2nd以来ですが、英詞よりもやっぱりこっちのほうがグッきますね。お薦めです。

Du & Jag Doden

★★★★

 3年のインターヴァルを経てリリースされた、スウェーデンの雄Kentの6thアルバム。重厚なリズム隊に乗せて叙情的に歌い上げるTr.1、2などでは、良い意味で「相変わらずの」磐石のKent節が聴けるが、今作は続くTr.3で新たな片鱗を見せる。

 物悲しくも素朴な歌に導かれて始まる楽曲は、やがて躍動するベースラインと激するギター、そしてKeaneを思わせるドラマチックなピアノの旋律に覆われ、一気に加速する。この静から動へ切り替わる刹那の昂揚感と、かつてない疾走感こそが今作の特徴だ。それを一層顕著に現すTr.5"Palace & Main"、ザクザクと切り込んでくるエッジの効いたギターと加速するボーカルを、シンセサイザーの大波が一掃する。さらに、初期Radiohead好きが聴けば狂喜しそうな、美しく明滅するギターフレーズが印象的なTr.7"Klaparen"、リフレインするキーボードがほの暗い昂揚感を生み出すTr.8"Max 500"と良曲が続くが、群を抜いて素晴らしいのが終曲の"Mannen I Den Vita Hatten"

 高みへと駆け抜けるドラミング、眩い光を撒き散らし劇的な旋律を奏でるキーボード、爆発的な叙情性を剥き出しにするギターリフが、珠玉のメロディと渾然一体となり押し寄せてくるこの楽曲は、Kent史上屈指の名曲と言っても差し支えないだろう。1stから3rdにかけて顕著であった、素晴らしいギターフレーズを軸とするバンドアンサンブルが好きな人にはかなりお薦めのアルバム。

Tillbaka Till Samtiden

★★★☆

スウェーデンの叙情系ロックバンド/Kentの07年リリース7th。過去にも流通の関係で手に入れ難いことがあったが、今作も当初はアホみたいに高い値段が付いていたため購入が遅れた。どの作品を聴いても、ほとんど瞬間的に彼らだと判る独特の「鳴り」はここでも変わらず。一方で、その形態には大きな変化があった。一昨年、バンドからメインギタリストのHarri Mantyが脱退。それを如実に反映するように、ギター主導のアンサンブルは後退し、代わって打ち込み風のリズム/シンセやキーボードといった電子器楽が強く押し出された内容になっている。

自分と同様、未だに(こんな悪流通の)新譜を追っかけてるような人間からすれば、ある意味その変わらない空間を聴けるだけで満足、って部分が少なからずある。ただ、そんな盲目的なシンパシーを除いて考えると、今作はどう見たって弱い。展開は軽薄とまでは言わないがあまりにも単調。鍵盤の閃きから全体を一気に巻き込んでいった前作のようなアンサンブルの昂ぶりも無く、何かしらのコダワリめいたものが見える瞬間も無い。要は、何でこれを作ってリリースしたのか全くワカラン。

「実験的」と言うほどの模索性も無いし、耳障りの良いメロを並べるわけでもない。それこそ褒めるなら、細かい箇所を無理やり持ち上げてやるしかないような捉えどころの無いアルバム。意味ありげに反復しながら、そのまま何も起こらずフェード・アウトしていくラスト・トラックを聴いてると、頭の中にたくさんの???が渦巻いた。とりあえず、初めて聴く分には全くオススメ出来ない1枚。

http://myspace.com/kentsweden



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