INTERPOL/Turn On The Bright Lights

★★★★

ネット上の所々で高く評価されているのを度々目にしたのがきっかけで興味を持ったNYのバンド、INTERPOL。暗闇の中で揺らめくロウソクの炎のように、儚くも力強い美しさが全編を覆うこのアルバムにおいて、特筆すべきはやはりリズム隊の面白さだろう。力強くビートを刻むドラムスに、カルロスの生み出す変幻自在のベース音が絡みつき、さらにそこに様々な表情を持ったギターが加わってくる。このバンドアンサンブルが最も面白い形で現れているのが、Tr.10の"The New"。6分ほどの楽曲の前半では、寂しげなメロディーラインが淡々と続くのに対し、それが中盤で突如、神経を逆なでするようなギター音が、特異なベースラインやボーカルと共に、美しい不協和音を成しながら流れ込んでくる感じは、ちょっとした気持ち悪さを感じさせながらも癖になる。Vo.のPaul Banksの抑揚の少ない揺らめくような歌が、一層このリズム隊の面白さを引き立たせているようにも思える。表面的な派手さは無いが、何度もリピートしたくなるような中毒性の高いアルバム。個人的なお気に入りは、晩秋を思わせるTr.3 "NYC"。



Antics

★★★★

 格段の深化を見せた2ndアルバム。オープニングトラックの"Next Exit"からして、メロディーに前作にはない柔らかみが感じられ、続く"Evil"もイントロから非常に印象的な立ち上がりを見せる。各パートの弾き出すフレーズがかなりメロディアスになっており、それらが一斉に奔流をなし、押し寄せ・畳み掛けてくる展開の高揚感が素晴らしい。

 「不協和音の美」というフレーズが脳裏に浮かぶ、タイトでソリッドな独特のバンドアンサンブルは相変わらず健在でありながら、今作ではそこに漂うピンと張りつめた「緊張感」を、メロディーの「温もり」がうまく包み込んでいる。白熱球の橙色が周囲の事物をボンヤリと浮かび上がらせるような、間接照明的な柔らかい光を放つ独特の音像空間は見事の一言。

Our Love To Admire

★★★☆

3年のインターヴァルでリリースされた3rdアルバム。"プロデューサーにTHE MARS VOLTAやMUSE等の作品も手掛けるRich Costeyを迎え〜"とあるものの、そのサウンドは奇天烈、かつ壮大な作風へと化けることもなく、相も変わらぬInterpol節で鳴らしている。

鈍く煌くマイナーコードのギター・リフが、「間」の重みを活かすように刻み込まれ、中量級のドラム・ビートがダンサンブルな音塊を弾く。優雅なダンディズムに彩られた動態と、同時に深い静謐の存在を聴き手に焼きつける音像が、この人達特有の空間を演出する。各種エフェクトや残響処理など、細部に拘った感のある今作は、そうした「暗闇の華やぎ」とでもいうべく特異な音のコントラストを、より鮮やかに炙り出さんとするようでもある。

が、3作目にして新たな局面を感じさせない内容に、個人的にはかなり強いマンネリ感や息詰まりを覚えた。スローな立ち上がりの"Pioneer to the Falls"から、リズミカルに鍵盤が打たれる"No I in Threesome"へ、アグレッシヴさを強く押し出したアップ・テンポの"Heinrich Maneuver""Mammoth"へと連なる序盤部こそ、まだ細部の音作りに集中すればそこそこ聴けるものの、煮え切らないギター・コードがツラツラと降り、ポール・バンクスの抑揚を廃した声の導入からリズム隊が介入〜という同様の展開が連続する中盤以降は、マトモに聴き続けるのがかなり辛い。

メロディ/展開で良い感じに突き抜けた前作は、1stから巧い具合に変化したなと思わせるものがあったのだが、ここに来て梅雨前線の如く停滞してしまった楽曲群には、少なからずフラストレーションを覚えます。デビュー時における斬新さも無くなった現在では、少しく面白みに欠ける感が否めない、というのが正直なところ。

http://www.myspace.com/interpol

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