THE HORRORS/Skying

★★★★

巷でポッと出ては消えていくTHE ○○sの類とは一線を画すバンドだなーとあらためて感じた英国の5人組バンド、3作目。

冒頭からズシリと拡がるサウンドは、まさしく90sのUKギターロックを思わせる、力強いブロウに裏打ちされた夢のように華やかで眩い快楽の世界。そのオープナー"Changing The Rain"なんてさながらTHE BOO RADLEYSみたいだが、かつてのマンチェスター・ムーヴメントを強く喚起させるビートと旋律の洪水は、ある種の全能感にも似た陽性のサイケデリアで空間を埋め尽くす。

上昇のスパイラルを描きながら幾度もリフレインするシンセが後半にかけて強烈な高揚感を増幅させる"I Can See Through You"、濃厚なミドルテンポが主流のアルバムの中でそのドライヴ感が鮮やかに映える"Endless Blue"、アッパーな上物とその昂揚を抑え込むようなヴォーカルがあいまって強靭なグルーヴを形成する"Moving Further Away"、そしてラストトラック"Oceans Burning"では、感傷的に揺れる歌が背後から一挙に噴出するノイズの美麗に呑まれていく。

耽美というほどにはそこへ淫しきれない、むしろその魅惑的な陶酔の中に在りながら来るべき終わりを知ってしまっているような儚い感覚が、言い難くすばらしい。今これをリアルタイムで聴く10代にも十分響く作品だとは思うが、90年代という時代をある種のノスタルジックなフィルターを通して視る人間にとってはさらに強烈な魅力を放つだろうアルバム。個人的には今作で一気にこのバンドに興味を持った。

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