GIFTS FROM ENOLA/Loyal Eyes Betrayed The Mind"

★★★☆

『エノラ・ゲイ号からの贈り物』
という不敵な(?)バンド名を冠する、米国ヴァージニア州の4人組ポストロックバンドによるデビュー・フル。意外やその楽曲からは、バンド名から連想される類のふてぶてしい過激さは感じられず、むしろ上質なまでに滑らかな音の遷移により様々なエモーションを湧出させていく、その巧みな過程にこそ耳が行く。

彼らの鳴らすサウンドには、多岐に渡るジャンルのピースが埋め込まれている。エレクトロニカの繊細な煌めき、マス・ロックの精緻な躍動、空間を揺るがすアリーナ・クラスの勇壮なリフに、大地を捲くり上げる轟音の表出まで、若さゆえとも言えるその貪欲な取り込み意識。と同時に、そうして採取したサンプルを実に巧みに配置していく様には、小憎たらしいまでにクレバーな落ち着きが漂っている。

そのサウンドにおいてとりわけ印象的なのが、随所で噴出するヘヴィ・ロック/メタル的要素。艶かしいウネリを放つ鉛色の音塊が、計算された強引さでもって豪快に景色を転覆させていく様は、かなり壮観。そうした点を含め、重なり合う旋律の多重奏には、先にレビューを書いたCaspianとも共通する部分がある。ただ、一つの層に織り込まれる音のパーツが多様なためか。このGifts From Enolaの楽曲からは、轟音部のカタルシスようりも、端々における流麗さや、時にナイーヴでさえある丁寧な展開といった部分に強く印象が残る。今後、かなり多方面への伸びしろを感じさせる、良質のデビュー・アルバム。

www.myspace.com/giftsfromenola