FROM MONUMENT TO MASSES/The Impossible Leap In One Hundred Simple Steps

★★★★

US西海岸のトリオ、FMTMによる03年リリースの2nd。ループし繋がれ変態していくギター・リフへ、非常にポリティカルなメッセージを掛け合わせていくインストゥルメンタル・ミュージック。アルバムタイトルが示すように、決して特異ではない『既存』のパーツ/パーツを組み合わせることで立ち現れる『その世界』は、これまでに無い新しい感覚をハッキリと提示している。かなり良いアルバムです、これは。

一人の英雄中心の歴史観(From Monument)から、大衆の重要性を説く視点への移行(To Masses)というバンド名を持つ彼らのサウンドは、終始に渡って極めて強い政治的メッセージを表出させていく。9.11テロ当日の報道(たぶん)をサンプリングしたオープニングトラックに始まり、随所に織り込まれてはアメリカという国家の独善・欺瞞性を曝け出していくような数多のスピーチ/ナレーション。そうしてサンプリングされ、”物語らされていく”無数の言葉と、その物語を演出せんと鳴り響くインストゥルメンタル。この組み合わせがもう本当に絶妙。次々とその表情を変えるサウンド・スケープを一切のストレスを感じさせずに展開していく様は、ちょっと異常なぐらいに巧い。

"気づけばそこに呑まれている"と言いたくなるようなその巧みな展開は、同時に"気づかぬ内に強烈な衝動を内部に膨張させる"音でもある。その叫び出したくなるようなプリミティヴな昂揚感を、代わって吐き尽くすかのように発狂するシャウト。壁の向こうで行われる絶叫を聴くような熱過ぎるラストを持つ"Spice Must Flow ""Old Robes"あたりでは、思わず鳥肌が立ってしまったほど。淡々としているようであり、滾り続けているかのようでもある独特のサウンド。緊張と情感、そしてエクスタシーが持続する47分間は、かなり素晴らしい。月末に行われるマスロック界の首領との来日公演が、非常に楽しみ。

Beyond God And Elvis

★★★★

来る新作からの先行シングル。新曲2つとそのREMIXを収録している。「ポストロックの手法を回りくどく演ってるだけ」という評も確かに的を得ているが、個人的にゃドツボな昂揚を供してくれるvery goodな3人組。

リミックスやTr.4"The Role Traversal"は正直さして良くないが、先の来日時にも披露されていたTr.1"Beyond GodAnd Elvis"が全くもって気色良い!ギター、ベース、ドラムにサンプリング、、、それらが春の日溜りにはしゃぎ遊ぶように散開し、収斂し、至福の轟音と共に炸裂する遷移の一連が、何物にも代えがたい昂揚で全身を充たす。感傷を煽りまくって止まないフレージング、昂揚の臨界点を軽々と跳び越え躍動するビート、劇的な彩りを添えるサンプリング・コラージュの絡み合いが脳内で祝祭を繰り広げる。今作だけ見れば、従前にあったポリティカル/ダークな雰囲気がほとんど消滅して響くが、果たしてアルバムはどうなってるのか。今から悶絶しつつ待っとこう。

On Little Known Frequencies

★★★★☆

米国のインストゥルメンタル・トリオによる3rd(REMIX曲が大半だった前作を含めれば4th)。過去にISISやMASTODON、最近だとFALL OF TROYやRUSSIAN CIRCLESの作品を手掛けている売れっ子Matt Bayles(ex.Minus The Bear)をプロデュースに迎えた8トラック/51分。ループフレーズを螺旋状に組みアゲていく昂揚+扇情的なサンプリング・ナレーションに「語らせる」仕様自体はこれまでと同じだが、全体的に「角がとれた」音像が印象的。さながら、経年により艶やかな丸みを帯びた古材に触れるような昂ぶりを感じる。

呟きに近い女声をネタに、70's progのダウナーな気配を膨らませるオープナー"Checksum"。旋回するKeyやシンフォニックなコーラスで彩りながら、基幹ではハードコア譲りのキメ/タメ/ブレイクを展開。全般に、初期の直接的で尖ったアジテーションは角を丸めて感じられ、サンプリングされたスピーチ/ナレーションも、音全体で語る上でのパーツの一つとして機能。その最良形とも言えるTr.3"Beyond God And Elvis"から、作中最も熱いスピーチ(MARIOSAVIOの64年"Barkley Free Speech")が炸裂する"An Ounce Of Prevention"へ、都会的な、どこか殺伐としたエネルギーを振り撒く"The First Five"へと繋がっていく。8分超に渡って展開されるラスト"Hammer & Nails"では、異常に心地良いノスタルジーが、やがて爆発的な上昇気流に呑まれて昇華。混沌すら巻き込んで、なお肯定的に突き進んでいくオーガニックなグルーヴが今作を象徴して轟き、響く。とりあえず、個人的にはなーんも文句ありまへん。最高です。初聴時のインパクトは別として、楽曲の完成度としては過去最強。年内にありそうな来日公演がほんまに楽しみです!

http://www.myspace.com/frommonumenttomasses