FRENCH KICKS/The Trial Of The Century

★★★★

 N.Y発の4人組、French Kicksの2ndアルバム。「メインボーカリストがドラムス」という幾分変則的な構成のバンドスタイルから生み出されるのは、絶妙なヒネクレ加減をもったポップサウンド。

 ビシバシと気持ちの良いビートを弾き出すドラムスに、ギクシャクとした金属的なリフを刻み込むギター、加えて渋めな声のボーカルが加わるスタイルは、フランツ・フェルディナンドを始めとする、最近流行りのポスト・パンクバンドのようである。しかしそこにジョッシュ・ワイズなる人物の操るキーボードが、時に歯切れよく、そして時にチャイムのように柔らかく明滅するサウンドを加えることで、彼らの音像空間は一気に柔らかくドリーミーな響きへと変わっていく。

 おそらくこの剛と柔のコントラストこそが、フレンチ・キックスの最大の魅力であろう。分厚いラインを奏でるベースと腰に来るリズムを叩き出すドラムスにより導入され、そこにそれを無視するかのように入り込んでくるニック・スタンプフのノスタルジックな歌声と、浮遊するキーボードの音色の絡み合いの妙が抜群なTr.4"Oh Fine"をはじめ、アルバム中の楽曲はどれもポスト・パンク系バンドの踊れる要素は根底に据えつつ、そこから感じる手触りは非常に柔らかく暖かみがあるという不思議なサウンド。メロディセンスと音のアイデンティティを兼ね備えた、なかなか面白いバンド。
http://www.frenchkicks.com/index.html