THE FRAMES/Mosaik

★★★★☆

ドイツ/ハノーファーの4人組による2010年作。昨年リリースのEP"CIXXV"に続くこれがデビュー・フルアルバム。音で物語る、あるいはイマジネーションを触発する、というインストゥルメンタル・ミュージックならではの至福を強烈に感じさせる楽曲群が、「ポストロック」の範疇に収まりきらない音の力で魅了する。

等身大の感情を奏で、重ね合いながら動いていく音景のリリシズムと、そこから生み出される巨大なカタルシス。鍵盤器楽の旋律を文字通りのkeyに、抗いがたい昂揚感を投げかけるインストゥルメンタル・ミュージック。所々で往年の「プログレッシヴ」バンドを思わせる珠玉の輝きを放ちながら、途切れることのない高揚のアーチを描く。そのどこか懐かしい、白昼夢めいた世界に鳴り響く、雷鳴のような乾き歪み割れた爆音のギターリフ。これがなんともダイナミックに、豊かな詩情を伴った物語を刻む。ノスタルジックに、メランコリックに、ドラマチックにと景色を一変させる旋律はほとんど魔法のよう。そこへ轟然と湧き出し振りかかるギターリフが、非常な開放感でもって空間を押し広げていく。

ゆっくりと夢中へ落ち込んでいくような"intoro"、その魅力的な音のレイヤー構造が顕わになる"The Beginning""Agenda"、リリカルな轟音が一つめのクライマックスを描く"Isp"、所々でパイプオルガンのようにも響くギターの轟音が背後で惑う旋律と重なり、移ろい、ときに激しく炸裂するその昂揚感が絶品の"Insomnia"、日本人の琴線に触れまくるkeyの旋律が轟音の彼方でチャイミーに明滅する"Horizon"、そしてラスト"M"でもまた、MOGWAIライクな親和性の高い鍵盤が、マッシヴな轟音の果てにひらひらと散り咲き、そこになんともいえない叙情の溜まり場を作り出している。風切り音のようなブランクを挟んで収録される隠しトラック風の物悲しいラストまで、完璧。真っ直ぐで、それでいて独創的。聴くたびに心が鮮やかに色づけられる素晴らしい作品。

http://www.myspace.com/framesband