THE EVPATORIA REPORT/Maar

★★★☆

以下おもっくそ主観的な感想なんだけれども、余りにも定式化され、もはやその組み合わせによってしか個性を競い得ないという幅の狭さが、最近の『叙情系ポストロック』に触手が伸びない要因かしらと考えた。本来ならば表現の手段として生まれていくはずの音因子が、今ではその逆を向いて多くを規定してしまっているというか。

様式美という言葉もあるように、定められたパターンが特定の感情を揺さぶることは間違いない。震えるトレモロの感傷や、壮麗なディストーションギターの洪水が織り成す昂揚感は絶対的に気持ちが良い。だけれども、そのパターンが生む効果の積算のみから出来上がったような音楽は、何かが根本的に欠落している。こと『叙情系ポストロック』においては、この音をこの展開に嵌め込めばこの感情が生まれます、という要素が余りにも強いのか、結局はその枠組みの中でセンスの良し悪しを競うしかなくなっているように聴こえてしまう。

各所で高い評価を得ていた今作は、ギター×2/ベース/ドラム/ヴァイオリン/キーボードから成るスイスの6人組による2nd。残念ながら上述の感覚は覆らず、EITSのような感傷性〜とかGY!BEのような不穏な音の嵐が〜とかいった感想しか浮かばなかった。別にフォローするでもないが、全4曲60分という長大な展開に身を投じることで、少なからぬ昂揚は覚える。この音がこの展開が好きなんだということであれば、それはそれで良いのかもしれないが、個人的には既存のパーツを我が物顔で振り回すぐらいのバンドが出てきたら面白いなぁと思う。

http://www.myspace.com/theevpatoriareport