ENABLERS/Output Negative Space

★★★★

 サンフランシスコのダーク・カルテット、enablersの2nd
。リリースはNeurot Recordingから。暗いダイナミズムを内包し、、重々しくも艶を感じさせるギターが闊歩する。その不穏にしてパンキッシュなアティチュードは初期モグワイを、あらゆるものをデストロイするヘヴィな音塊はISISを彷彿とさせる。が、そこへ被せられる徹頭徹尾のスポークン・ワード。これこそがこのバンドの最大の特徴だ。

 転調を繰り返しながらも、1つの確たる軸をもって全体を牽引するJoe Byrnesのドラミングの上、捩れ/ノタウツ金属質のギターが覚醒的に、刺さる。突き刺さる。緻密に制御された混沌が、耳朶に噛みつき、黒いグルーヴとなって場に逆巻く。そしてそう、Pete Simonelliの歌。というか声。不穏なバンドアンサンブルに輪をかけるように語りかけられる、抑揚を廃した彼のナレーションが、作品全体に異様な緊張感、神経症的なラッピングを施す。容易なカタルシスを赦さないそのサウンドは、しかし随所で爆発的な熱量を伴った炸裂を見せつける。重々しく沈鬱なフレーズに、絶妙に見え隠れするメジャーコードが醸す昂揚を絡めて展開されるTr.3"On Monk"においての暗いダイナミズムは、ちょっと他のバンド名による形容が思い浮かばないぐらいに刺激的。現シーンにおいてありそうで無かったこのスタイル。聴くシチュエーションによってはそれこそ鬱になりそうな重さ(ただし、決して「ドローン」なんていう安直なものではない。)だが、かなりのオリジナリティを孕んだ良盤ではないか。初期モグワイやNeurosisの「空気」が好きな人は是非聴いてみて下さい。

http://www.myspace.com/enablers