ELEVENTH HE REACHES LONDON/Hollow Be My Name

★★★★

叙情系ポストロックの鋳型に、エモーショナルな熱唱を投げ入れたサウンドを展開する豪州の5人組バンドによる2nd。音とは特別関係ない(と思う)が、バンド名はバイロンの物語詩『ドン・ファン』から取っているらしい。

初期DEATH CAB FOR CUTIEはじめ、US枯れエモ系にも近接するメロディが涙腺を直撃する、冒頭タイトルトラックが物凄く良い。メランコリーを湛える湖上から、一挙上空へと舞い上がるドラマティックな唄と音のマリアージュ。感傷的に、気怠るく心地良くまとわり続けるメロディが、ふいに背後のインストゥルメンタルと合奏して駆け昇り、激しく引き攣れていく展開の引力が素晴らしい。

昨年LIFESTORY:MONOLOGUEを聴いた際にも思ったが、既に飽和して久しい叙情系『ポストロック』をネクストレベルへ引き上げるモノって、やっぱり「歌声」を置いて他に無いのかも。Tr.3"I Am The Bearer, I Stand In Need"では、重くメタリカルなリフが空間をくし削りとっていく場面も登場するが、アルバムは特に終盤にかけ、ダークでヘヴィな空気を色濃くしていく。いずれの楽曲も、感情を波立て続ける合奏と極まって炸裂する激しいパートが繰り返し応酬する、直情的だが単純に割り切れない展開を持っている。カヴァー・アートはISISやNadjaの作品も手掛けるSeldon Huntによるもの。ISISやCONVERGEといった大物ともツアーを巡る、バンドの何処のジャンルにも据え置けない魅力と馬力が光る快作。

http://www.myspace.com/eleventhhereacheslondon