Elbow/Asleep In The Back

★★★★

なんと形容したらいいんだろうか・・・。マンチェスターの5人組バンドELBOWは、すでに10年以上のキャリアを持っており、そういった意味では新人バンドという肩書きは似合わない。サウンドも1stアルバムにして既に完璧に完成されているといってもいいかもしれない。

彼らの音は冬の夜気のように冷え冷えとしている。暗闇の中からぼんやりと浮かび上がるようにおぼろげなオルガンに、一定の規則的なパーカッション、ドラムが加わる1曲目"Any Day Now"に始まるこのアルバムは、「無機質」という言葉がぴったりくる。Vo.のGuy Garveyの、時に呟くような、そして時に情感豊かに歌い上げるファルセットボイスさえも、不思議なことに平熱以下の温度しかもっていないように感じさせてしまう。そしてその冷たさが、このアルバムに荘厳ともいえる美しさと大きなスケール感を与えている。そんなElbowの持つ世界観が濃縮されたのがTr.6の"NEWBORN"。7分以上に及ぶ大曲ながら、完璧に構築された音の壁が、劇的なクライマックスへと向けて昇り詰めていサウンド展開が素晴らしい。個人的に好きなのは、終曲のScattered Black And White。回顧的な歌詞が、柔らかなアコースティックギターやピアノサウンドと相まって、無機質な作品中において唯一、人間的な温かみを感じさせ、かなりグッとくる。本当に素晴らしい作品。

Cast Of Thousands

★★★☆

2年の歳月を経てリリースされたElbowの2ndアルバム。まず何よりもアルバムを聴いて肌に感じる感覚が、前作とはかなり異なっているように感じた。ゴスペルが大々的にフューチャーされた曲があったりはするが、音の構成や使われる機材については大きく変化してはいないはずだが、前作においては、冷気を孕んだように透き通った鋭利ともいえたサウンドが、今作においては、その音の周りに柔らかいベールがかかったような、どこかしらふんわりとした温かみを持つものへと変化して聞こえる。自然豊かなスタジオで、のんびりとレコーディングされたというアルバムだけに、その時のメンバーの心情が一つ一つの音の響きに柔らか味を与えているのかもしれない。

ただ、より一層壮大さを増した今作は確かに気持ち良いのだが、そのベールがかった雰囲気のせいか、1stで見られたElbowの卓越した構築力によるスリリングな展開が、今作では少し見えにくくなってしまったように感じてしまう。もっともっと聴き込めば、このベールの下に隠れた豊かなサウンド展開に気づくのかもしれないが、とりあえず今はこの評価。

Seldom Seen Kid

★★★★





Build A Rocket Boys!

★★★★

Guy Garvey率いる英国の5人組による2011年作。前作"Seldom Seen Kid"は同国のMercury Musci Prizeを受賞するなど、意外や着実な歩みを続けている彼ら。10年以上に渡ってオリジナルメンバー体制を崩していないところも、そのサウンドの求心力と無縁ではない。

ざわめく木々の葉ずれのような、あるいは煌めくせせらぎのようなナチュラルなパーカッションが息づき、豊かな量感を持ったメロディ、コーラス、ストリングスが力強いミュージックを隆起させていく。その細やかでアーティスティックな音作りはデビュー時から一貫しているが、本作では散りばめられるフックや音の深みがこれまでになく増して響き、どちらかといえば玄人好みだったバンドの音世界に良い意味でポピュラーな拡がりを生んでいる。

全てが黄金色の光に包まれていた幼少期を振り返るような柔らかなメロディと、色とりどりの感情が明滅する優しく、穏やかな深みを持った世界。個人的にこれまでベストだった彼らのデビュー作をより豊かに乗り越えた感のする、珠玉の1枚。

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