THE DRIFT/Noumena

★★★★

 元Tarentelのメンバーを含むサンフランシスコの4人組バンド、Driftのデビュー盤。全6曲/55分。即効性は、無い。後から次第に、ジワリと、来る。身体を芯から、加熱する。「ドローンサウンド」と形容するには余りに鮮やか。ジャズの香りを多分に感じさせるシネマティックな音像は、内にたぎる熱い血潮を仄かに感じさせながら聴き手をスッポリ包み込み、緩やかに精神を解放する。

 オープニングトラック"Gardening , Not Architecture"、さざめくチェロの喧騒の中から、深みのあるドラムラインがゆっくりと浮上し、濃密な空間を創りあげる。脳裏に浮かぶモノクロームの風景が、次第に鮮やかな色彩で彩られていく。Tr.2"Invisible Cities"、足元から湧き上がるジャジーなベースラインが幾度となく旋回し、空間を煙るような濃い霧で充たしていく。その濃く立ち込めた音のベールを切り裂くように現出するクリアギターが艶やかな光を射し込み、やがて哀愁のトランペットが背景を燃えさかる茜色にジワジワと染め上げていく。

 ゆったりと拡散するフリーキーなセッションが生み出す心地良い昂揚感に浸り、随所で力強く躍動するリズム隊に打たれる。安直な展開に頼らず、次第に表情を変えながら反復・進行するリズム隊が全体を牽引する構成には、先のTarentelの新譜に共通するものも感じるが、Driftの醸成する有機的で豊潤な音像は、むしろその対極のスタンスを取っているようにも思える。リリースはTemporary Residenceから。素晴らしい作品を続々とリリースする素晴らしいレーベル。
http://www.thedriftmusic.com/