DOVES/Lost Souls

★★★★☆

前身バンドを含めればかなり長い経歴を持つDOVESの、3年という長い期間をかけて作られた1stアルバム。本当に「作り込んだ」という表現がぴったりとくるような、豊かな表情を持った素晴らしいアルバム。

おそらくはスタジオで様々なサンプリングを施し、多くの音を加えていったであろうこのアルバムは、しかしながら驚くほどに人間的な生の感情を殺さず、むしろそのサウンドワークがその生の部分に一層の深みを与え、聴く者の胸に熱い思いをこみ上げさせる。かつてのマンチェスターサウンドムーヴメントを、リアルタイムでは経験していない私のような者でさえも、このアルバムを聴くとなぜか強烈な郷愁感を覚えてしまう。特にTr.4のSea Songは、聴くたびにイントロで涙しそうになり、合間に現れる音のキラメキにもまたドキッとさせられる大好きな曲。エレクトロニカなサウンドとビート、生楽器、そして深い憂いを含んだボーカルが奇跡的に調和したlost souls、文句なしの傑作。闇の中で瞬く光を模したアルバムジャケも、dovesのサウンドをうまく現しており、これまた素晴らしい。

The Last Broadcast

★★★★☆

概して、傑作と言われるアルバムを生み出した次の作品で、周囲の期待に応えるだけのものを作るのは、本当に困難なことだろう。しかしDovesは、周囲のその期待のさらに上を行くような、素晴らしい輝きに満ちた2ndアルバムを完成させた。

シンセと緩やかなノイズによりゆっくりとアルバムの世界に導かれる"intro"に始まるアルバムは、続く"word"においてこのアルバムを象徴するかのようなダイナミックな展開を見せる。まばゆい光がさんさんと降り注ぐようにギターが高らかに鳴り響き、前作から一層力強さを増したサウンドが打ち鳴らされる。さらに続く"There Goes Fear"でも幾筋もの光が交錯するようにきらめく音が、キャッチーなメロディと共に溢れ出し、アルバムの持つ陽性のイメージを決定づけている。アコースティックギターがメインの"M62 Song"や"Friday's Dust"、シンセを用いた穏やかなインスト曲などのように、前作で見られたDoves特有の物悲しさを感じさせるメランコリズムはしっかりと健在であるが、やはり今作を包むのは闇ではなく「光」。Tr.9の"Pounding"を言い表すのは、「歓喜」「祝福」「希望」といった形容以外のなにものでもないだろう。そしてアルバムは、高みを目指してどこまでも昇りつめていくようなセッションをエンディングに据える"Caught By The River"で締めくくられる。

こうして見ると、1stの持つ印象との対比が大きいことに驚いたが、改めてlost soulsを聴きなおしてみると、Tr.10の"The Ceder Room"なんかでは、既にこの2ndの片鱗が垣間見えるような感じもして面白い。それにしても次はどう出てくるんだろうかと、また期待が膨らんでしまう。



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