DON CABALLERO/For Respect

★★★★

今やすっかり「BATTLESのIan Williamsが在籍していた〜」と過去語りされてしまうのが悲しい、ドンキャバレロの93年リリース/1stでございます。よく言われるように、バンド史上においてはちょっとした異作。マスロック的な精緻さは欠片もなく(いや、少しは在るか)やたら獰猛なウネリが主役のインストゥルメンタル・ハードコア。

爆発に爆発をもって応えるというか、荒くれたイカツイ音塊が連鎖的に絡む仕様はやたらとタフ。酔っ払った猟師が嵐の海上で殴りあいを演じてるかのような、何よりまず屈強で、それでいて醒めた暴力の気配を感じます。テクニカルなタームもあれど、基本はゴリッゴリの爆音を武器にした殴り合い。ラリったSEから雪崩れ込む"Got A Mile, Got A Mile, Got An Inch"なんてほんまに最高で、タールのように粘っこい重激音と、それをガッチリ躍動させるDamon Cheのドラミングの絡み具合に思わずウォオ!と興奮必至。飾りっ気などまるで無い、ひたすらに荒くれたインストロックに、シーンを超越したタイムレスな魅力を感じます。

World Class Listening Problem

★★★★

伝説のマスロックバンド、Don Caballero。ドラマーのDamon Cheを中心に、新生メンバーによる復活作。「マスロック」と聞くと、精緻/無機質/変拍子なんてフレーズが脳裏に浮び、ともすれば何だかとっつきにくいイメージを持ちがちである。同じような語感をこの単語から得る人がいたならば、恐らくこの"マスロックの元祖"による新譜は非常な驚きをもって脳内をブラッシュアップするだろう。

引き締まった音塊を、それこそハーケンのように打ち込みまくるDamonのドラミングが全体像を型作り、メタリックな質感のリフが怒涛の音壁を打ち立てる。まぁその演奏のカッコ良いこと!知的でありながら激アグレッシブに、タイトに引き締められた音塊が、感覚中枢に向けて炸裂する。展開の巧みさはやはり超一級でありながら、その技巧さえどこかへ吹っ飛ばしてしまうぐらい、極めてストレートなロックのダイナミズムを感じ取ることのできる作品。と同時に、ただただ攻めたてるだけでない、その緩急の取り方の妙が素晴らしい。乾いたスネア音が弾け、ノスタルジックなギターリフがバップするTr.5などは、まるで終わりゆく夏に対する憧憬を描き出すようなセンチメンタルな響きを孕み、Tr.7においても、メロウに明滅するギターリフが、何とも言えぬ感慨を呼び起こす。

ベストトラックはTr.4"I agree...No!...I disagree"
邪悪な暴力衝動に裏打ちされた昂揚感を掻き立てる、ダークなリフの明滅。絶妙な転調、メロディアスなヘヴィ・ベースによるインタールードを挟み、怪しく蠢きながら一気にその世界を打ち立てていく様が何とも素敵。重鎮たる地位に全く甘んじることのない、素晴らしい刷新性をもった一枚。

Punkgasm

★★★☆

マスロック界の偉人さんによる復帰後第2作。レーベルは前作に引き続きRelapse。インテリ臭のしない精緻な激音。無二ではないが、余裕で抜きん出ている肉感的なマスロック。1分台のショートナンバーから、度重なる転調が襲い来る8分超のナンバーまで、長短に富んだ14曲を展開。邪悪な冷気を放つ無機的フレーズの絡みから、獣めいた獰猛な音塊が咆哮を上げるフェーズへと移行する、そのドラスティックな転換が焚きつける衝動性は相変わらずカッコイイ。

芳しからぬ評も目立つ今作だが、個人的には新生メンバーの初作となった前作よりはコチラのほうが好みかも。その意気込みが若干息苦しくもあった前作に比べ、今作では程よくヌケている。ほとんど別バンド然とした唄ものナンバー3曲にしても、それを入れる辺りに何か意図がある、とは到底思えない適当さこそが強い。トータルで何処かへ連れて行く!ってなリーダー性なぞまるで無し。その適当な方向感覚が賛否の要因ではあるんだろうが、パート/パートでカッコ良かったらいいやん、という聴き方もあってかトータルの印象はむしろ良かった。こんな頻繁に来るとは思ってもいなかった再来日ライブも楽しみ♪

http://www.myspace.com/doncaballeropgh