DO MAKE SAY THINK/You, You're A History In Rust

★★★★

前作から4年。カナダはトロントの5人組/DMSTの5thアルバム。そのサウンドの基軸は今作でも全く変わることなく、シーンの変遷などどこ吹く風といった感じで、独自の素晴らしい世界を描き出している。

ブラスセクションの挿入を含む、生の響きを強く感じさせる各器楽のセッション。独特の澱みを伴った、気怠くも心地良い昂揚に煙る景色が描き出されていく。アブストラクトにぼかされた音景から、フイに走り出すリズム隊が放つ峻烈の瞬間。心地良い混濁と鮮烈な覚醒の境が入れ替わる一瞬の、いかにも職人めいたドラマティックな展開は、まさしく彼らの十八番。本作においても、オープニングトラック"Bound To Be That Way "からそのメランコリックな空気が、素晴らしい躍動感をもって震え始める展開が現れる。

歌心に満ちた、柔らかなエモーションを孕むヴォーカルを大々的に導入した楽曲など、これまでに無いアプローチも見せるものの、先に書いたようにその音世界は良い意味で不変。ただ、前作と比べて見ると、深い深い湖沼に堆積する美しい澱のような重みを感じさせたメロディは、今作ではかなり軽みを増した華やかさを多くにおいて感じさせる。

中空にパッと鮮やかに花咲くような、そうした瞬間瞬間を彩るメロディと、縦横無尽に空中を駆け巡るドラミングが牽引する躍動のインストゥルメンタル群が、なんとも言えぬ華やぎ溢れる昂揚を次々に炸裂させていく。

伸びやかな咆哮をあげるブラスセクション、砕け散るハイハットの煌めき、鮮やかに叩き落されるディストーション、その他諸々が渾然と成り一体と化し、溢れ出るように押し寄せるTr.3"The Universe!"Tr.7"Executioner Blues"あたりなどでは、これまでに無いアグレッシブな展開でもって、猥雑にして美麗な熱を放出させている。

彼らのアルバムは、過去のどれをとっても総じて非常に高いクオリティを持っている。なので、この音が好きであればどれから入っても間違いはないのだが、今作は鳴らされるメロディにかなりストレートな昂揚感があり、また数多の器楽で打ち煙る景色の中で行われる"静と動のコントラストの美麗"とでも言うべきものがかなりハッキリと感じ取れるので、そうした意味でDMST入門盤としてもオススメ出来るかもしれない。気になる人は是非ご一聴ください。

www.myspace.com/doomachesatan