THE DEARS/No Cities Left

★★★★

 ストロークス以降、雨後のタケノコのように現れては消えていった「The ○○s」系のバンドだが、このモントリオールの6ピース/The Dearsは、明らかにそういったバンドとは一線を画すサウンドを鳴らすユニークなバンドである。カナディアンバンドでありながら、かつてのブリットポップ期の雰囲気を色濃くまとった彼らのサウンドは非常に英国的。モリッシーや、時にデーモン・アルバーンをも彷彿とさせるボーカリストMurrayの歌とともに溢れ出すのは、UKインディーシーンの粋を結集させたような、翳りをもちながらも美しく響く珠玉のメランコリア。

 躍動するベースラインと、唄うように表情豊かなドラムスがシンクロし、鍵盤楽器が異国情緒をふんだんに撒き散らす中、ある時は蒼くキラメキ、ある時は鉛のように鈍い光を放つギター音が鮮烈な切り口で入りこんでくる。加えて「Aメロからサビへ」といった既成概念を無視するかのような、トリッキーなメロディー展開を見せる楽曲が多く見られるのもまた面白い。しかしながらそういった特異な展開が楽曲の安定感を寸分も損なわせないのは、効果的に導入されるストリングスの響きと、ベースとなるメロディラインの絶対的な美しさに拠るのだろう。神々しい光を放つ叙情サウンドが素晴らしい。情熱的な男女混声ボーカルを挟みながら、終盤にかけて徐々に放出する熱量を増大させていく曲群に圧倒された。

 先に述べたアーティストや、Doves、Elbow、Clearlakeのようなサウンドが好きな人は是非聴いてみてください。下記で試聴可。
http://www.tonspion.de/downloadframe.php?id=2951&TS=03deef38a780c83f102452b1bba6a549