BILLY COBHAM/Spectrum

★★★★

初期Mahavishunu Orchestraのドラマー/ビリー・コブハムによるリーダー作(73年リリース)。後にディープ・パープルのギタリストとなるトミー・ボーリンを始め、マハヴィシュヌ時代の同胞/ヤン・ハマーもエレピで参加している。

元祖超絶テクニカルドラマーとして有名なコブハムだけど、今作は自身のその超絶っぷりの披露宴ってわけでは全然なく、全体へその優れた音楽性を物語らせるための、良質な起爆剤として働いてる。これがまたほんまに格好いい。

今で言う"フュージョン"の土台が作られたのがこの70年台初期らしいけど、なんというか、印象としてある「予定調和の"フュージョン"」とはまるで違ってる。ホントの意味でイノヴェイティヴ。音と音とが触発し合い、何か新しいものが生み出されていく昂揚が、聴いててビシビシと伝わってくる。この辺、今聴いても非常にアヴァンギャルドに響く作品が幾つもあってほんまに面白い。

今作は全6曲/36分のコンパクト設計。一番好きなのはTr.4"Stratus"。コブハムと電子音のバトルから突入する強靭なグルーヴ。完璧なベースがきっちりと反復し、エレピがギターがソロを飾る。知らなんだがこのベースのリー・スクラーって、かなり有名なスタジオ・ミュージシャンだそう。これぞプロ!と唸らされる鉄壁のリズム/グルーヴがめっちゃ気持ちええです。

先に「全体に対する起爆剤」とは書いたものの、コブハムも各所でキッチリ見せ場を作っており、手数の多い、パワフルかつ精緻なプレイはまじで素晴らしく刺激的。極端にギラギラッとした光り方はしないものの、ジャズとロックの旨みを良い具合にブレンドしたような楽曲群は、品質・即効性共に高く、普段この辺を聴かん人間にも結構な訴求力を持って響くのではないかと思います。

http://www.myspace.com/billycobhammusictributerespect