BATTLES/Mirrored

★★★☆

随分と待たされた感のあるデビュー・フルアルバム。遅ればせながらレビュー。BattlesはN.Yベースの4人組。元Don Caballero、あるいは元Helmetのメンバーを含む、猛者ぞろいのバンド。

体脂肪率一桁台の、異常に引き締まった音塊が飛ぶ。激ミニマリスティックなリズムの精緻な錯綜。その展開は、非情なまでにストイック。破片的な音の鈍い煌めきと、超人的なリズム/グルーヴを最前面に打ち出し進むそのスタイルは相当に斬新。

しかし同時に、粒子的に飛び交うミクロレベルの鮮烈に反し、そのストイックな構成により、マクロでの爆発を捻じ伏せるように抑え込む形で進行する楽曲は、良くも悪くも並でない緊張を聴き手に強いるようであり、EPレベルでさえ、オールで聴くにはそれなりの忍耐を必要とした。

そういった意味で、このバンドがどういった形でアルバムを纏め上げるのか、そこが非常に興味深かったのだが、その統合因子が結局は、ファニーな側面を強調した変声だったというのは正直言って拍子抜け。

全ての器楽がパーカッシヴに打ち鳴らされ、精密な狂騒で場を埋めていくTr.1"Race: In"や、祭的なグルーヴを醸成するTr.2"Atlas"、最もライブ的な熱量を感じさせるTr.10"Tij"などは聴いていて物凄く昂奮するのだが、全体として見れば、明確なエクスプロジョンの無い展開がフラストレーションを感じさせるだけという悪い側面が強く浮かび上がり、通して聴くのは非常にツライという、EPでのネガティヴな印象を払拭することは出来なかった。散漫ではないのだが、ひどく部分部分での感触ばかりが際立って響く作品だと感じた。

Gloss Drop

★★★★

賛否両論だった前作"Mirrored"から丸4年の間を置いてリリースされた2ndアルバム。

アクが抜け聴きやすくなった、というのが第一印象で、ブライトな明度で統一されたトラック群が小気味よく跳ね、響く。トラック名に"Africaやら"Dominica"といったフレーズが入っているが、ところどころでスティールパンの音色が印象に残る以外はとりわけ「アフリカン」なテイストっちゅうわけではない。いっそアート・ブレイキー/アフリカン・ビートの現代版みたいなのを演ってくれたらおもろいんだけども。

鉄壁ながらうまいこと緩みのあるリズムに、明るいコントラストで跳ねる洒脱なアレンジ。終始スムースに流れる分、個人的には前作よりリピートはかさむんだが、とりわけ強いインパクトは覚えず。EPリリース時の彼らに「神」を見た人には、やっぱり今作も物足りなく感じるのでは。

Myspace
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