スウェーデンの4人組プログレッシヴ・バンドによる5th。個人的には、この作品で初めて彼らの音に触れました。
まずもってメロディが相当に気持ち良い。極めてウォームで、しかしその温もりの隙間から陰惨な光景を垣間見させるような、掴みどころの無い憂鬱を滲ませる空間は、焦燥の澱を底部に湛えた安息で全体を包み込んでいます。
古典的とも言える伸びやかなギターリフが緩やかに戯れ、後景ではチェロやオルガン、メロトロンといった器楽群が、咽返るように濃密な旋律により場を染め上げていきます。
初期クリムゾンも真っ青な、温かみのある激鬱メロディによって穏やかにこちらを撃沈する"King
Oblivion"、紡がれる感傷の旋律から、深みのある重厚なリフ/プログレッシヴに戦慄くムーグ音の拡散へと展開する"A
Sky About To Rain"、蠕動するチェロの旋律と、混成のヴォーカルが強い混濁を誘う"Stardust
And Sand"など、全編を一のカラーで完全に纏め上げた42分間は、恐ろしく高い完成度を誇っています。
幽玄に蕩揺たう生楽器と、様式的なギター・リフが絡み合うインタールードを始めとし、要所要所を捉えれば、かなりエキサイティングな瞬間瞬間も見つけられるのだが、そうした端々に注意を置いてしまうと、あまり楽しめない作品であるようにも思う。要はこの全体を包む空気感が好きか嫌いか、それが全て。個人的にはこの残虐で気怠い昂揚を孕み、人肌の温かさを放つ空間は、星新一のSFを読んでいるのにも似た感覚を呼び起こすようで、かなり好み。これを機に過去の作品にも手を出してみたいと思います。
http://www.myspace.com/anekdoten