A CRICKET IN TIMES SQUARE/ST

★★★★

 Washington D.C.の4人組、ACiTSの1st。90年代初頭shoegazeとindie rockの空気が色濃く薫る。オープニングトラックの"Careless"では、イアン・ブラウンなんかを彷彿とさせる良い感じに力の抜けた歌声が、ゆっくりと上昇していくメロディーに乗る。そしてつかの間の登頂の先、眼前で爆ぜるファズギターといがみ合うフィードバックノイズが錯綜する。続くTr.2ではベースラインの深い湖沼上で、ノイジーギターが逆巻く波を立てながら舞踏する。そしてアルバム中盤、幾重にも折り重なる狂気のギター群と暴力的なコーラスが混じり合うTr.4"Everything Known About Medicines"で、一つのハイライトを迎える。

 Swervedriverや初期Rideが好きな人なんかには当然お薦めできるサウンドだが、余りある暴力性と、英国バンドに通じるような退廃的な美を兼ね備えた今作には、「かつての時代の焼き直しだ」と一口で片付けてしまうことができない魅力がある。昨今チラホラと耳にする、「シューゲイザー復権」の息吹を力強く感じることができる良作。

http://www.acricketintimessquare.com/sounds.html